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神戸地方裁判所尼崎支部 昭和61年(ヒ)7号 決定 1986年7月07日

申請人

河合大介三和実業株式会社

右代表者代表取締役

戸栗享

右両名代理人弁護士

二宮忠

二宮充子

被申請人

日本鍛工株式会社

右代表者代表取締役

柴柳徹郎

右代理人弁護士

西尾幸彦

主文

申請人らの申請を却下する。

理由

一申立の要旨

1  申請の趣旨

左記決議を目的とする株主総会を申請人らにおいて招集することの許可を求める。

(一)  被申請人会社の取締役として戸栗享を選任する。

(二)  被申請人会社の監査役として河合大介を選任する。

(三)  被申請人会社監査役伊藤邦彦を解任する。

2  申請の理由

申請人らは、六か月前から引き続き被申請人会社の発行済株式総数一〇二五万株の一〇〇分の三以上である一四三万一〇〇〇株を有する株主であるところ、昭和六一年三月八日、被申請人会社に到達した書面によつて申請の趣旨記載の決議を目的とする株主総会の招集を請求した。しかるに、被申請人会社の代表取締役柴柳徹郎は、株主総会招集の手続をしないから、申請人らは、商法二三七条二項により裁判所に対し、総会招集の許可を求める。

二当裁判所の判断

1  一件記録によれば、前記申請の理由記載の事実のほか、次の事実が認められる。

(一)  申請人三和実業株式会社(以下、申請人会社という)は、昭和五四年一〇月頃、被申請人会社の一〇〇万株程の株式を取得し(但し、昭和六〇年一一月三〇日時点において、その持株は、一一三万一〇〇〇株である)、申請人河合大介(以下、申請人河合という)は、昭和六〇年八月二七日、被申請人会社の三〇万株の株式を取得し、それぞれ株主となつた。

(二)  申請人河合は、昭和六一年一月一〇日付書面で、同年二月二七日開催の定時株主総会において、申請の趣旨(一)、(二)記載の事項を議題とすることにつき、株主の提案権を行使したが、被申請人会社取締役会において不採用となり、更に、同月五日付書面で、少数株主権に基づき、申請の趣旨(一)、(二)記載の事項を決議事項とする株主総会の招集を請求したが、被申請人会社の同月一〇日の取締役会によつて、これを拒否する旨の決議がなされた。

(三)  被申請人会社の定時株主総会は、同月二七日、開催され、申請人河合は、株主兼申請人会社代理人としてこれに出席し、右総会において、申請人河合の前記提案を拒否した理由等について質問し、これに対して、議長柴柳徹郎が説明して、この点については、質議が一応終了し、被申請人会社代表取締役提案の議案については、賛成多数で可決され、右定時株主総会は、終了した。

(四)  被申請人会社において、取締役会側が影響力を有し、取締役会側に同調するとみられる株主は、被申請人会社役員(持株合計五一九万九〇〇〇株)、従業員(持株合計二万九〇〇〇株)、元顧問(持株一二万七〇〇〇株)、いわゆる親会社(持株三七〇万六〇〇〇株)、受注先(持株合計五六万七〇〇〇株)、仕入先(持株合計三〇万九〇〇〇株)、金融機関(持株合計五一万九〇〇〇株)であり、これは、議決権を行使しうる株式総数一〇二五万株の過半数を超えている。

2  以上の事実によれば、申請人河合は、被申請人会社から、昭和六一年二月二七日開催の定時株主総会において申請の趣旨(一)、(二)記載の事項を議題とすること、更に、同趣旨の決議を目的とする同月五日付の少数株主権に基づく株主総会招集の請求をいずれも拒否され、申請人会社とともに本件申請に至つたもので、本件申請が、形式的には、商法二三七条二項の要件に該当することが認められるが、しかし、被申請人会社においては、取締役会側が議決権を行使しうる株式の過半数を把握していることが認められその他前記取締役会、株主総会の状況からすると、仮に、申請人ら主張の議題を目的とする株主総会を招集したとしても、その決議成立の可能性がないことは明らかであり、従つて、申請人らの本件申請は、権利の濫用と言わざるを得ず、結局、本件申請を認めることはできない。

よつて、主文のとおり、本件申請を却下することとする。

(裁判官豊永多門)

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